2りんかんの各種イベントにスタッフとして運営に携わっていく中で刺激を受けて、49歳でバイク再デビュー。そこから3年、今年で52歳になるが、ますますバイクに夢中になっている。夢は娘さんとのタンデムツーリングだが、現状では「怖い、あり得ない」と拒否されている哀しみを持つ。特技は「その角度だと足が短く見えない?」とチェックすること。

これまで弐輪道ライディングレッスンやツーリングを通じ、ライダーとして成長をしてきた青柳さん。プライベートでも友人と一泊ツーリングやソロツーリングで潮干狩り(家族にフラレたとの噂アリ)をし、後輩ライダーの福本優香ちゃんに気遣いできるまでになりました

そこで、遂にサーキット走行会へのデビューが決定したのです。入念な準備をしたことは、準備編でお伝えしました。あとは当日を待つのみなのです。ところが準備が全て終わってしまっているからか、前日までにいろいろなことを考え過ぎてしまったようです。

「当日が近付いてくると、不安が大きくなってしまって……。3日前の天気予報は雨。ちょっとだけ“走らなくて済むかも?”なんて思ったりもしました」もちろん雨でも走行会は開催します。2りんかんの担当者からは「初回から困難になった方が面白いんじゃない?」とスムーズかつ軽やかにスルーされてしまいました。「僕が辛い方が面白いですよね! わかりました、走りますよ! 走ればいいんでしょ!」と半ば逆ギレ状態で当日を迎えました。

ところが当日の雨は朝の間だけ! なんて晴れ男なんでしょう? 前回のキャンプツーリングで雨に祟られた方とは思えません! そして小雨の降る中を、メッシュジャケットでやって来た青柳さん。「寒くないんですか?」「レインウエアは?」と質問すると「寒かったよ」「レインウエアは持っているけど、走り出しちゃったから……」とよくわからない解答を連発します。かなり緊張している模様です。

今回、青柳さんが参加したのは筑波サーキット・コース1000の走行会。2りんかんで多く開催しているのはコース2000なのですが、基本的な流れは同じです。コース1000の方が絶対的なスピードは遅いので、初心者向きと言えるでしょう。

いつもは運営側として会場にいる青柳さん。「いつもと景色が違う」と新鮮さを味わっています。ですから、参加者のみなさんが行っている作業も、見ているはずが理解できていないようです。

慣れているみなさんは、受付が開始になるまでの間にライト類のテーピングを行います。受付を早めに行えば受付後でも間に合うのですが、先にテーピングしておくと余裕ができるのです。2りんかんの体験走行会では、テーピング用のガムテープは貸してもらえるのでとっても手軽。受付で借りて、周囲を見ながら行動開始です。

テーピングする箇所

ヘッドライト/前後ウインカー/テールランプ/反射板(リフレクター)/バックミラー(外さない場合)

テーピングは初めてとは思えない上手さで完了。さぁ受付です。2りんかんテントへ行き、予約したクラスの場所へ並んで申し込み用紙の原本を提出するとブリーフィング資料とゼッケン、そして計測器を渡してくれます。次はゼッケンと計測器の取り付けです。

受付をし、ゼッケンと資料と計測器を受け取ります。

早速ゼッケンを貼付け。興奮度合いがどんどん上がっていきます。

ゼッケンの貼る場所、計測器を取り付ける場所は車種によって違ってきます。わからない場合は2りんかんスタッフに相談をすると優しく教えてくれます。どんどん“参加車両らしさ”が増してきて、青柳さんの興奮度も上昇。そのまま車検へ行き、車両の準備は完了です。

横のゼッケンを貼る位置を教えてもらう青柳さん。

ゼッケンが終わったら、今度は計測器の取り付け位置を教わります。

車検も無事に完了です。青柳さんも一安心。

続いてレンタル装具の受け取りです。事前に申し込んでいますので、ゼッケンと名前を伝え、専用の用紙に必要事項を記入するれば装具を借りられます。青柳さんの場合、ツナギ、ブーツ、グローブの3点セット。これで走る準備は万端です。自走で参加した場合、荷物は2りんかんテントのクロークに預けることもできます。これで安心して走行に集中できるというわけです。

早く準備をしたら、ブースを巡って楽しさ倍増!

2りんかんのサーキット走行会では、さまざまなブースが出店されています。早めに準備をしておけば、これらのブースで楽しさを倍増し、安心も倍増するのです。

タイヤメーカーさん(今回はブリヂストンさん)のブースでサーキット用にエアー調整

D.I.Dさんブースでチェーンメンテナンス

シュアラスターさんブースでガソリン添加剤&ヘルメットメンテナンス

ベスラブースさんでブレーキパッド談議

時間になったら朝のブリーフィングが開始されます。走行する全てのライダーが受けるもので、ルールとマナーを説明してくれます。サーキット走行に慣れていない方にとっては馴染みのない、旗の説明も丁寧に行われます。「いつもは運営側なので右から左でしたけど、今回は真剣に聞きました」と青柳さん。いつも真剣に聞いておいてくださいね。

気になる旗についても「今までは分かったフリしていたのですが、しっかり頭に叩き込みました」としっかり理解してくれいたようです。こんなに真剣に話を聞く青柳さんを見るのは、取材班も新鮮でした♪

緊張しながら準備運動をする青柳さん。MCの柴田奈緒美さんもちょっと心配そう?

ブリーフィング中だというのに、カメラ位置を確認する青柳さん。でも、メガネを上げる余裕はなかったようです。

「サーキット初めての人〜」という柴田さんの問いに、元気よく手を挙げる青柳さん。

コースへの入り方&出方やフラッグの説明など、重要な内容が多いブリーフィング。青柳さんの真剣さが増していきます。

ブリーフィング後は、各クラスで走行準備に入ります。しかし青柳さんが参加しているレッスンクラスは座学から入ります。一日3回の走行を共にする仲間同士、一緒に座学を聞くわけです。ここで青柳さんは「優しい内藤先生のレッスンクラスだから“何とかなるだろう”と思っていたけど、まわりはみんなビッグバイク!」と驚いていたようです。それでも「クラスの中でレベルや参加回数によってグループ分けがされていました。250ccで初心者の僕はCグループでマンツーマン! これなら怖くないぞ!」と一安心なのでした。

頭のウォーミングアップも完了し、緊張をほぐすためか自発的にストレッチなどで身体のウォーミングアップもした青柳さん、さぁいよいよ走行が近付いてきました!

レッスンクラスを担当するSRTTの先生達。とっても優しくて、わかりやすい説明をしてくれます。座学を聞き、しっかりと意識しながらライディングに臨めるのがレッスンクラスの良いところ。上達が早いのです。

驚きの「ほめて!」病

走行が近付き、緊張感が高まっている青柳さん。いきなり取材班を呼び、何を言うかと思ったら……「ツナギ一人で着れたよ」でした。一瞬、凍り付く取材班。みぃ〜んな一人で着ているんですよぉ〜。それでほめられることはないんですよ〜。なんて言葉を出すのもひと苦労でした。

運命の一本目。どんな走りをし(想像はできますが)、どんな感想を持ってくれるのでしょうか? インストラクターさんがゆっくり先導し、コースイン。見るからに肩に力が入っています。周回を重ねる中でちょっとペースが上がると、車間が開いてしまいますが、これは無理をしていない証拠。この光景を見て「転倒はないな」と安心した取材班なのでした。

走行的には“ツーリング”と表現するのがピッタリ。エンジンの回転数も控え気味で、そこまでメリハリはありません。でも、これが普通なのでしょう。何せツーリングでしかバイクに乗っていないのですから。

かくれた被害者、ミスター・タムラ氏

走行自体には大きな問題はなかった青柳さんですが、自意識が若干過剰だったようです。走行中、ピットレーンに行った取材班はスマホで賢明に撮影しているベスラのミスター・タムラ氏に話かけられます。「一番寝ている(バンクして傾いている)写真を撮ってと言われたんですが、どこで撮れば良いのでしょうか?」と。基本的にバンクしていません! なのでどこで撮っても同じです! こんな無理難題をふっかけられてかわいそうに……。青柳さん、こういうお願いは上達してからにしましょうね。

「走行前は不安が7、ワクワク感が3くらいの気持ち。先生から離れないように、ラインを覚えるように……とは思っていたけど、ほとんど何がなんだかわからない間に終わってしまった」と、青柳さんは魂のこもったコメント。そして何より本音だったのは「無事に戻れてうれしく思います」と、ちょっとオフィシャル風に語った言葉でした。

うーん……「楽しい」のひと言はまだ出ませんねぇ。あれだけ緊張でガチガチだったので、一本目は仕方ないところでしょうか。

一本目の走行を終えたら再び座学となりますが、その前に先生と走行を振り返ります。無事に戻って来れたことと、パンでパワーを補給したことで、少し緊張がほぐれた青柳さんは饒舌に語ります。「何がなんだかわかりませんでした!」と。

せっかくのサーキット走行なので、もう少し回転数を上げてからシフトアップ。しっかり加速しましょうとアドバイスをもらい、ライディングフォームについての座学を聞きます。真剣な顔をして聞いていますが、青柳さんの頭にどこまで入ったのでしょうか……?

「不安5、ワクワク感5」で二本目の走行。「レッドゾーンあたりまで使う。ブレーキングする」という反省だけを頭に置いていたようです。確かに回転数を上まで使ってしっかりシフトアップしています。クラッチを切ってからスロットルを開けて回転数を上げてつなぐ“ブリッピングシフトダウン”もでき始めています。写真では伝わりにくいですが、走りに勢いが出てきました。はっきり言って劇的な変化だと言えます!

「レッドゾーンあたりまで使ってのシフトアップ、ブレーキング、グリッピングシフトダウン(取材班注:本当の名前はブリッピングシフトダウンです)も意識して走ったら、感覚が全然違う! さっきより速かったハズ! タイヤがしっかりグリップしている感触が得られたし、少しずつ楽しくなってきた!」と、青柳さんの言葉数が増えてきました。これも楽しさを感じられたからこそです。ちょっとした言葉の間違いも大目に見ましょう(公開はしますが)!

イメージトレーニングはMotoGP!

走行時間の合間は、身体を休めつつお勉強できる時間。多くの方は他の人のライディングを見てお勉強します。しかし青柳さんクラスになると、MotoGPのライブ映像になるようです。ベスラさんのブースにお邪魔して、イメトレに励む青柳さん。はっきり言って遊んでいるようにしか見えませんが、この効果は出るのでしょうか?

早いもので、この日の最後となる三本目を迎えます。先生からは「コーナリング時に身体が全然動いていないので、動かしましょう」とのアドバイスを受けます。また、もて耐優勝ライダーであるベスラの福田さんからは「ストレートではスロットルを全開にする意識を持ちましょう」とワンポイントのアドバイスをもらいます。本当に良い人が良いアドバイスをくれるのです。

“身体を動かす”というのは、ライダーが身体をバイクの内側や外側に動かすことで、バイクの重心を変えるということ。サーキット走行の場合、シートに座っている位置を内側にずらし、身体全体を内側に入れる“ハングオフ”と呼ばれる曲り方が一般的。こうすることでより高いスピードで曲れますし、何より安定したコーナリングが可能になります。

スポーティなバイクは最初から曲りやすい性能を持っているので、動かす量は少なくて済みます。青柳さんの乗っているGSRのようなツーリングバイクの場合、より大きな動きをしてあげるとベスト。わかりやすいように、青柳さんのGSRに乗ったベスラ・福田さんの走行写真を参考にしてください。

話を青柳さんに戻しましょう。遂に走行前の気持ちは怖さ3、楽しさ7まで上昇! ピットロードでも緊張がほぐれて余裕すら感じさせます。一本目とは大きな違いが生まれています。

いよいよ一日の集大成を見せる時です。二本目の勢いはそのままに、直線のスピードは間違いなくアップ。そしてコーナーでも身体を動かしています。これは大きな成長です!

……が……、取材班は写真を撮っていて気付きました。何かがおかしい。せっかく内側に身体を移動しているのに、ヒザはタンクに付いたまま。これでは身体の向き(上半身の向き)が進む方に向きません。何より“カッコいいライディングフォーム”になりません。どうも走行前に「車体をホールドすることが大切」と言われたことが印象に残り過ぎているようです。実際の説明では以下のような内容でした。

車体をホールドすることが大切

車体をホールドすることは大切/サーキット走行やレースでは、コーナーでの動きを考えてかかとでホールドする人が多い/“直線では”ニーグリップも有効

かかとでしっかりホールドできていれば、ヒザは両方開いていても良いのです。ところが、内側のヒザをタンクにつけ、外側だけを開いてしまっている青柳さん。ちょっと走りにくいフォームになってしまっています。何より「カッコいい写真を撮ってね!」と周囲にお願いしまくっているだけに、これは残念でした。

一応、ゼスチャーで伝えようと試みる取材班でしたが、青柳さんがこちらを見るタイミングは皆無。とても残念ですが、次回への課題にしてもらいましょう。

とは言え、成長したことは間違いありません。内藤先生からも「良くなりましたね! タイムも良いはずです!」とほめてもらえました。きっと感触もかなり変わってきているはずです。感想を聞いてみましょう。

「初めて“え? もう終わり?”って思った。走行途中なのに、みんなが戻っていくなぁって思っていたら、終わりの時間でチェッカーフラッグ。それくらい時間を忘れてしまうほど楽しかった」

もうこれは大進歩! はっきり言ってサーキット走行会は転倒なく、楽しく走りきれれば良いのです。レースと違って、それが勝者の条件なのです。

無理難題その2

かくしておいても良いのですが、青柳さんのコメントの続きをご紹介しましょう。「走り終わった後に知ったかぶりのカメラマンがコーナリング時に内側の足が開いてないとか言っていたけど、知らないもーん、それ言われてないもーん、三本目の前に電話して教えてよ〜!」(原文ママ)

座る位置を初めてずらしたのが三本目。予知能力でもない限り教えることはできません。MotoGPでも他の方の走行でもちゃんと見ていれば分かるはずのこと。しかも「知ったかぶり」呼ばわり……。二度とアドバイスをしないと心に誓った取材班なのでした。

走行が終わり、自身の成長も感じ、満足げな青柳さん。でも余韻に浸り、休憩ばかりしていては帰りが不安です。さっさと帰り支度を整えましょう。

帰り支度リスト

ゼッケン&テーピングを全てはがす

計測器を外して返却

タイヤの空気圧をストリート用に調整

基本的には上記の3項目。中でも重要なのはテーピングをはがすことと、計測器を返却すること。テーピングをしたまま自走で帰宅すると、事故の原因になってしまうので危険です。そして計測器は付けたまま帰ってしまうと、後日にサーキットまで返却に来なければいけません。どちらも決して忘れないようにしましょう。

帰り支度を終え、着替えた青柳さんは初めて他の参加者のライディングを眺めます。「確かにみんな内側のヒザが開いてるなぁ」なんて呟いていました。

全走行が終了した後は、アフターミーティング! 2りんかんの走行会ではアフターミーティングに素敵な景品がたくさん登場するじゃんけん大会が行われます。青柳さんは負けまくりましたが、じゃんけんを楽しめたようです。そして、最後は当日のラップタイムを記載したリザルトがもらえます。

内藤先生とともにタイムをチェック。最初は1分5秒などのタイムだったのが、一番速い時で55秒台をマーク。内藤さんからも「凄いじゃないですか! 成長が素晴らしいです」とほめてもらっちゃいました。

サーキット走行の楽しさに目覚めた青柳さん。ベスラさんの“もて耐優勝マシン”にまたがって「もて耐デビューしちゃう?」なんてご満悦です。もちろん疲れはあって。降りる時は足が上がらず大変そうでしたが(笑)。さて、次はどんなバイクの楽しさに気付いてくれるのでしょうか?

次回のレポートも乞うご期待!